パソコンやスマートフォンはもはや生活必需品となっており、高齢者もショッピングや株取引、SNSまで使いこなしています。こうしたデジタル機器が広く使われることに伴い、相続の場面に「デジタルデータの取り扱い」が関係してくることが増加しています。

 デジタルカメラや携帯電話、パソコンの普及は今に始まったことではなく、これまでもデジタル機器という“物”として相続は存在していました。
例えばデジタルカメラでいえば、カメラ自体を動産と捉え、機器内部に保存されている写真データについては機器の一部と捉えることが多く、そもそもあまり意識されることがありませんでした。

しかし現在では、所有している機器の物的な枠を超えたWEB上のオンラインデジタルデータやアカウントが多く存在し、むしろその方が主流となっています。

 こうしたデジタルの世界での、“物”の定義では捉えられないモノを「デジタル遺産」と呼び、その取扱いについては様々な議論があります。

明確な法的根拠はまだありません

 そもそも「デジタル遺産」なる法律用語はなく、明確な基準が存在するわけでもありません。その取扱いについても明確な法的根拠がないのが現状です。

ビットコインを代表とする「暗号資産」のように、これまでに存在しなかった種類のデータやサービスのアカウントが現れています。今後デジタル遺産の相続を巡って争訟が起こり、それに伴う判例の蓄積、法律等の制定と進んでいくと思われます。

残す側は引き継ぎの準備をしましょう

 先述のとおりデジタル遺産についての法的根拠はありません。財産を残す側については、そのことを理解したうえで準備が必要になるでしょう。資産運用において「何で運用するのか」は最重要項目でしょう。これは資産承継(相続)においても同じです。

 現金・預貯金・貴金属・不動産など、これまでも様々な形で資産を後世に引き継いできたわけです。不動産についても引き継ぐには、登記についてなど一定の知識が必要です。

デジタル遺産についてはこれまで以上に専門知識を必要とします。最悪の場合、遺産の存在に相続人が気づかないこともあります。そうならないためにも準備は必須です。その準備とは、

① 終 活(情報の整理)
② 遺言の作成(法的準備)

①終活」は、最近よく耳にする言葉ではないでしょうか。エンディングノートの作成などともいわれます。デジタル遺産の承継においては、各種パスワードの存在が非常に重要になります。

パソコンのパスワードが分からないので立ち上げることもできないという遺族からの相談は増加しています。遺言書に記す内容ではありませんが、家族に伝えておくべき項目です。

「②遺言の作成」については、デジタル遺産に関わらず相続で揉めないために準備すべきです。①と②を合わせて準備することで残された家族が困らないよう相続の準備を整えていきましょう。

~街の身近な法律家~

相続まるっと相談室 佐藤行政書士事務所