「LGBT」(最近では「LGBTQ」)と聞いて性的少数者を指すことは、さすがに人権後進国の日本といえどもかなり一般化したのではないでしょうか。

 私は大学で社会学を学んでいたこともあり、「LGBT」の情報について比較的早い時期から接していました。その時の担当教授の「どうひっくり返っても男が子供を産むことはできない(身体的制限を取り払うことはできない)。そのうえに「社会」が同性愛者に対して法的・制度的制限を課す必要がどこにあるのか。」という言葉が印象的に記憶されていますし、現在の私もそのように考えています。

 残念ながら、「相続」に関してもLGBTカップルは法的・制度的な制限を掛けられていますご存じのとおり日本では同性婚は認められていません。制度の見直しの話は別の機会に譲るとして、この逆境ともいえる環境において

LGBTカップルは自身とパートナーを守るべく準備を早期に進めるべきだと考えています。

同性のパートナーに「相続」はできない

 相続人となれるものは法律で定められています。配偶者と子、直系尊属、兄弟姉妹です。異性婚であれば、パートナーは配偶者と認められ相続人となります。しかし前述したとおり日本では同性婚は認められていませんので、同性のパートナーは配偶者と認められず、相続人とはならないわけです。これは何十年生活を共にしても変わることはありません。

 つまりLGBTカップルが数十年生活を共にし、一方が亡くなった場合に、例えば亡くなった方名義の自宅マンションがあってもパートナーが継続して住めない可能性があるのです。遺言が残されていない場合は、原則として法定相続人(親・兄弟姉妹など)が相続します。

パートナーの今後の生活を考えると心配です。どうすれば良いのでしょうか。

遺言は必須です

 相続はできなくても、遺贈(死後に贈与する)することができます。これは同性カップルに限らず、相続人以外の人に死後、財産を譲りたい場合に行うことができます。

ただし、遺贈については「遺言」で行う必要があるため、遺言の作成が必須となります。

 つまり「遺言」を作成することで同性のパートナーへ将来の安心を残すことができるのです。家族・親族との関係は人それぞれでしょう。理解が進んだとはいえ、LGBTの方には家族と疎遠になっている方も少なくありません。

 遺言の内容によっては、残されたパートナーと家族の間で争いが起こることも考えられます。遺留分の考慮であったり、死後の事務手続き、祭祀主宰者の指定、遺言執行者の指定など「揉めないための遺言」を作るためには工夫が必要です。ぜひ専門家にご相談ください。

~街の身近な法律家~

相続まるっと相談室 佐藤行政書士事務所