平成30年発表の統計によると、全国に約846万戸の空き家があるそうです。とんでもない膨大な数です。実際、京都市にある当相談室の近所にも空き家は存在します。「相続」の専門家の立場としても「空き家問題」は関心事の一つです。今回は、「空き家対策」という言葉を勘違いしてるかも!?という話題をお届けします。

 これまでも相続を起因とする空き家に関する相談を受けてきて、多くの相談者が、行政の空き家対策について「空き家を何とかしてくれる」「補助金などがもらえる」と勘違いしています。たしかに各自治体などでは空き家の流通支援等を行い、なかには補助金制度を設けているところもあります。

空き家問題の本質は管理不全に起因する近所迷惑

 平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」)が施行されました。この法律の第1条を見てみるとその主目的がわかります。

第1条 この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体、又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り合わせて空家等の活用を促進するため、(途中省略)もって公共の福祉の増進と地域振興に寄与することを目的とする。 

 条文からわかることは、「空家法」の主目的は「地域住民の生活環境の保全を図ること」であり、「空家の活用」は従目的で、最終目的は「公共の福祉の増進と地域振興に寄与すること」だということです。

所有者としての責任を果たさなければならない

 法律の中身を見てみると「空き家問題を行政が解決してくれる」という期待が少し薄くなったかもしれません。

 事実、行政は「解決してあげる立場」ではなく、空き家問題の解決を「支援する立場」です。空き家問題の本質は、管理不全に起因する近所迷惑の問題、すなわち「民間×民間」の問題のため、公権力たる行政が積極的は最小限が好ましいでしょう。

 とはいえ、各自治体の空き家問題に関連した相談や補助金、専門化の派遣などの行政サービスは当事者のみでの対応困難な場面で大きな助力となります。上手く活用して空き家問題解決に結びつけていきたいものです。

【参考資料:京都府行政書士会発行「空き家対策基本書」】

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