令和3年にも相続に関わる大きな法改正が行われました。
今回は、相続登記の義務化についてお話します。
相続業務のなかで「遺産分割協議書作成」のご依頼を受ける機会は多々あります。この遺産分割協議の対象となる遺産には、ご自宅を含む『不動産』が存在することがほとんどです。
そのご依頼のなかに被相続人(不動産の名義人)が亡くなってから10年以上経過したものが少なくありません。
令和6年(2024年)4月1日以降は、相続登記を3年超放置していると過料(10万円)を徴収される可能性がありますので注意が必要です。しかしながら、問題は罰則金(過料)を取られることではありません。
いざ相続登記をしようと思っても、「相続手続きを進められない状況」に陥っている可能性があり、多くの方がその事実に気付いていないことが問題なのです。
「相続手続きが進められない」とはどういうことでしょう?
遺産を相続するにあたっては、まず遺言書の有無で進め方は変わります。相続手続きを放置しているご家族のほとんどが「被相続人が遺言書を残していない。」のが現実でしょう。その場合は、すべての相続人が参加しての遺産分割協議が必要になります。
この「すべての」というところがポイントです。言葉にすると簡単ですが、実際にはすべての相続人が協議に参加し、全員の同意を得ることは容易ではありません。ちなみに、協議とは「話し合い」のことです。話し合いで解決しなければ、調停・審判と進まざるを得なくなります。つまり裁判で決着をつけるというわけです。
すべての相続人が近くにいるとも限りません。
名義人が亡くなって相当の期間が経過していたり、名義人が親・祖父母である場合は、数次相続(遺産分割協議がまとまる前に相続人が亡くなり、次の相続が開始された状態)に陥っていることも多々あります。そうなると、そもそも誰が相続人なのか確定することも難しく、確定できたとしても付き合いのほとんどない親族のため連絡先もわからないということも起こります。
また相続人が協議に参加できない状況もあります。「できない」とはどういうことでしょうか?それは、相続人の中に、判断能力がない方がいる場合です。知的障がいをお持ちの方が代表例でしょう。そして超高齢社会の日本で最近増えているのは認知症の方です。いずれも相続人自身に判断力がないため、代わりに協議に参加する『成年後見人』をつける必要があり大変です。
相続登記を放置している不動産のほとんどが「相続人が住む自宅」か「空き家(名義人のかつての自宅)」です。平穏な日常においては「誰が名義人か」など考える機会は少ないでしょう。しかしながら、自宅を「売却しなければならない」、「大規模リフォームしたい」、「被災して大規模修繕が必要」など不動産の処分に係る大事なときに名義人が故人では契約が結べません。
「急いで相続登記しないと!!」と焦っても前述のとおり簡単には行きません。
これまでに挙げた内容は、最悪の事例ではありません。当事務所に寄せられる相談のなかで頻繁に存在します。「長年住んできた自宅の相続登記など簡単だろう」と軽く考えていた相談者が顔面蒼白になる様を何度も目の当たりにしました。だからこそ、このコラムをお読みの皆様には、少しでも早く専門家に相談することを強くお勧めします。
~あなたの街の身近な法律家~
相続まるっと相談室 佐藤行政書士事務所