日本社会は高齢化を超えた超高齢社会となり、その傾向は当分変わることはないでしょう。介護の世界では、「介護する側」「介護される側」共に60歳を超えている場合に「老老介護」と呼び、介護が困難になる事例も増えていることから大きな社会問題となっています。
「相続」においても高齢化は避けられず。被相続人(亡くなった方)、相続人共に60歳を超えている相続は「老老相続」と呼ばれるようになっています。実際、当事務所が受ける相談、依頼にも「老老相続」に該当するものは非常に多くなっています。今回は、「老老相続」の現実とどのように備えるべきかについてお話ししていきましょう。
「老老相続」が起こった場合に問題になりやすいことは主に3つあります。
①相続人の健康状態が悪い
②相続人(子)が先に亡くなっている
③孫世代への財産継承を検討する です。
①相続人の健康状態が悪いについては相続手続きが進められない恐れもあり、場合によっては深刻です。この健康には認知機能も含みます。
例えば、亡くなった方(享年90歳)の配偶者(夫、妻)が存命であれば当然相続人となります。その配偶者もそれなりにご高齢でしょう。そうなると認知能力に不安が生じます。子どもについても安心できません。60歳を超えていれば健康状態に問題があることも少なくありません。
相続人が複数いれば遺産分割協議を行うことになります。全員が参加し内容に合意しなければ手続きを進めることはできませんので注意が必要です。相続人同士の仲が良くても法的条件が整わずに手続きを進められない、または進める気力・体力がないということもありえます。
②相続人(子)が先に亡くなっているについても最近では珍しくありません。そうなると代襲相続となり被相続人の孫が相続人となるので協議をまとめるのも一苦労です。
③孫世代への財産承継を検討するについては、相続人である子も高齢者に該当することとなれば当然に自身の終活を考える必要があります。特に不動産については相続人である子が承継するのか、孫が承継する方が活用できる場合もあるので検討の価値はあるでしょう。
昭和の時代であれば、亡くなる側であった60代、70代が相続人として遺産を引き継ぐのが日本社会の現状です。確かにお元気な方が多いのも事実ですが、それは旅行や趣味など余暇を過ごす場合であって、不慣れな相続手続きを問題なくこなせる方はごく少数でしょう。
自宅の名義変更と預貯金の解約というオーソドックスな遺産分割協議・相続手続きであっても最低3ヶ月程度は掛かります。昨今では金融機関でも相続手続きに対して、非常に厳格な対応をとるようになっています。それは紛争に発展する相続が増加しているからです。金融機関の対応については今後も緩和されることはないでしょう。
では、どう対応すれば良いのでしょうか。やはりしっかりと備えるしかないでしょう。
遺言の作成です。そして遺言には遺言執行者を指定しておくことも重要です。できれば行政書士や弁護士などの専門家を指定しておくと相続人も安心できるでしょう。まだ親御さんがお元気であるなら、早急に備えることをお勧めします。
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